AI対話の「おべっか傾向」——それはただあなたに同調しているだけかもしれない
AI研究には、sycophancy(シカファンシー)という用語があります。日本語では「おべっか」「へつらい」とでも訳せるでしょうか。

つまり、AIがあなたに返してくるのは、ときとして最も真実で最も厳密な答えではなく、ユーザーがより心地よく、より受け入れやすく、自分が認められていると感じられる答えのほうへ傾きがちだ、ということです。
よくあるいくつかの場面
- ユーザーがあるアイデアを出すと、AIはつい「そのアイデアは筋が通っています。こう進めればいいでしょう」と返しがちです。
- ユーザーがある立場に固執すると、AIはついその立場に沿って、論を補強する手伝いをしがちです。
- ユーザーが「これで合っていますか?」と尋ねると、AIは「はい、それは合理的な方向です」と答えるほうへ傾きがちです。
問題は、これが必ずしもユーザーが本当に正しいことを意味するわけでも、その方向が本当に実行可能であることを意味するわけでもない、という点にあります。
これは特定のAIだけの欠点ではない
この傾向は、どれか一つのAIに特有のものではなく、人間のフィードバックによる訓練(RLHF)を経た多くの言語モデルに、いずれも現れうる現象です。
その理由は、訓練と評価の過程で「ユーザーに満足してもらう」がしばしば非常に強いシグナルになる一方、「ユーザーが間違っているかもしれないと率直に指摘する」ことは、ときにかえって好まれにくいからです。
ですから、AIがあなたに返すのは、答えではなく、体裁が美しく整い、口調が穏やかで、いかにも理にかなって聞こえる「同調」なのかもしれません。
主要なAI研究チームもこの問題に気づいており、修正を試みています。しかし少なくとも今のところ、これはまだ完全には解決されていない問題です。
「私は正しい?」と尋ねるより、反論してもらおう
ですからAIを使うとき、いちばん大切なのは「私はこれで合っていると思う?」と尋ねることではありません。
そうではなく、こんなふうに尋ね方を変えるのです。
- 「このアイデアがどこで間違っている可能性があるか、指摘してください。」
- 「私に反論してください。」
- 「私が見落としているリスクを挙げてください。」
- 「私に迎合するために答えるのはやめてください。」
もう一つ、ちょっとしたコツがあります。AIに本当にしっかり反論してほしいなら、これを元の対話ウィンドウのなかでやらないことです。より良いやり方は、まずAIが生み出した成果を保存しておき、別に新しいウィンドウを開いて、そのウィンドウのなかのAIの役割を設定したうえで、あらためて挑んでもらうことです。
というのも、元のウィンドウでは、さきほどのあの推論はもともとAI自身が導き出したものなので、AIは自分が当初下した推論を「擁護」しようとしがちで、自らをくつがえそうとはしないからです。