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背景グラデーション補正:ABE、DBE、GC、GraXpert

リニア段階2022.05

背景の光とカラーのグラデーションを除去することは、天体写真のリニア段階における基本の技術です。PixInsight 内蔵の ABE・DBE から、後発の GradientCorrection(GC)と MultiscaleGradientCorrection(MGC)、さらには無料の独立ソフト GraXpert まで、使えるツールはますます増えています。この記事では、それぞれの位置づけと違い、そして私自身の実測での所感を整理します。

背景グラデーション補正の基本原理

背景の光とカラーのグラデーションを平らにならすのに使うのは減算ですが、鍵となるのは——正しく背景モデルを推定できるツールが必要だという点です。PixInsight の ABE や DBE が、まさにこの役割を担っています。

単純にグラデーションを引き算するだけでは、背景モデルを正しく推定していない状態だと、たいてい結果に問題が出ます。というのも、本物の背景モデルはしばしばかなり複雑な画像であって、単純なリニアなグラデーションではないからです。しかも減算とはいえ、元画像からそのまま背景モデルを引けばよいというものでもなく、そのプロセスには天体信号への影響(たとえば星の色ずれ)をできるだけ避けるために、少なくとも空間周波数に関わるアルゴリズムが介在しています。前後を比較するときは、同じ STF 設定で確認することを忘れないでください。

DBE が推定した複雑な背景モデル。単純なグラデーションではない

ABE と DBE:近い親戚どうし

ABE(AutomaticBackgroundExtractor)と DBE(DynamicBackgroundExtraction)は、PixInsight にある 2 つのよく似た背景抽出プロセスで、主要なパラメーターの選択肢も似ており、名前が少し違うだけです。

原則として、DBE は ABE のすべての機能を含んでおり、さらにリアルタイムの内容プレビューと、手動・多角形でのサンプルポイント配置の機能が加わっています。ですから DBE が使えれば、当然 ABE も使えます。実際、ABE のサンプルポイント配置と、DBE の「自動」サンプルポイント配置を並べて見ると、位置はかなり近いことがわかります。注意したいのは、DBE の自動サンプリングはあくまで使い方の一つにすぎず、ほかにもっと手動で、もっと緻密なやり方があるという点です。

ABE と DBE のパラメーター対応、および両者のサンプルポイント位置の比較

GraXpert:無料の独立した選択肢

GraXpert は、リニアの状態で背景の光とカラーのグラデーションを除去するための無料の独立ソフトです。効果はなかなか良く、コントロール性も高く、結果はおおむねスマホアプリの光害除去機能よりも優れています。32 ビットの TIFF や XISF ファイルを保存でき、Windows・Mac・Linux の三大プラットフォームに対応しています。PixInsight の DBE を使っていないのであれば、検討する価値のある選択肢です。

その後、GraXpert は AI で訓練したモジュールをリリースし(とはいえ AI に過度な期待は禁物です)、サンプルポイントを手動でクリックしなくても光のグラデーションを除去できるようになりました。正式版では AI モジュールを自分でダウンロードする必要すらなく、ソフトが必要なときに自動でダウンロードしてくれます。

ここで率直な助言をひとつ。もしあなたが PixInsight をすでに持っているなら、内蔵の DBE を使うのが間違いなく良い選択です。しかし PixInsight を購入していないなら、GraXpert はリニア段階での光のグラデーション除去としては効果の良い無料ソフトのはずです。

GraXpert で背景グラデーションを除去する操作と結果

その後、ある同好の方が PixInsight のプロセス(スクリプトではなく Process)を開発し、PI の中で直接 GraXpert の機能を呼び出せるようにして、画像を GraXpert に書き出してからまた読み込むという手間を省けるようにしました。使用の前提は、あらかじめ GraXpert をインストールし、AI データベースを有効化してダウンロードしておくことで、そうして初めてこのプロセスが動作します。

PixInsight の中で直接 GraXpert を呼び出すプロセス

とはいえ、直接の比較では、GraXpert AI はやはり背景でない部分を選んでしまうのを私は確認しました。下の M101(RGB 結合後に緑がかっており、フラットか漏光かキャリブレーションフレームの問題と思われる)のように、左の GraXpert AI のモデルは被写体を誤って選んでしまい、右の DBE のモデルは明らかにクリーンです。総じて、DBE のモデルのほうがやはり優れています。

GraXpert AI と DBE の背景モデルの直接比較(M101)

GradientCorrection(GC):新世代の自動化

GC はパラメーターさえ正しく選べば、効果は本当になかなか良いです。最大の利点は——背景を手動でクリックする必要がないことで、画面全体が星と星雲で埋め尽くされ、背景がまったく見当たらない画像に対しても、サンプルポイントを選べないという心配がいりません。

実測では、輝度チャンネルの暗黒星雲は処理後に明らかに立体的になりました。カラーチャンネルは、もともと左右で緑から青へと移り変わるグラデーションがありましたが、処理後にはかなり均されました。

GradientCorrection の前後比較と背景グラデーションモデル

MultiscaleGradientCorrection(MGC):深刻な光害への対処

MGC は、フラットがなく、しかも激しい周辺減光があるという状況の処理に特に向いています。一組のフローを実測してみました。元画像 → MGC 処理後 → さらに DBE 処理、の 3 枚を同じ STF で確認すると、暗くなっていた周辺と光のグラデーションが段階的に消えていくのがはっきりと見て取れます。

元画像、MGC、MGC+DBE の三段階でのグラデーション除去の比較

MGC の威力は、ある実例で余すところなく発揮されました。ある同好の方が光害地で、しかも赤道儀なしという条件で撮影し、フラットやその他の問題があるかどうかわからないという状態でした。私はその方のインテグレーション済みファイルをダウンロードし、MGC、BXT、SPCC、NXT に加えてノンリニアのストレッチとカーブツールを使い、およそ 15 分で成果を仕上げました——元画像では見えなかった馬頭星雲まで浮かび上がり、その過程で目立ったインテグレーションやフラットの問題も見られませんでした。MGC が一度で光害のグラデーションを片づけてしまったのは、確かに驚きでした。

MGC などのツールで光害地・赤道儀なしの画像を処理し、馬頭星雲が浮かび上がる

まとめ

背景グラデーション補正のツールは次々と新しく出てきますが、選ぶ際のロジックは実はとても明快です。

  • PixInsight がある場合:DBE を主力に。全自動が必要なとき、背景が見つからないときは GC か MGC に任せ、深刻な光害には MGC で下地を作り DBE で仕上げます。
  • PixInsight がない場合:GraXpert が最も効果の良い無料の代替手段です。

ツールはどんどん賢くなっていきますが、「まず正しい背景モデルを得て、それから穏やかに減算する」というこの核心的な考え方は変わりません。それを理解してこそ、手元のこの画像にはどのツールの、どのパラメーターの組み合わせが合うのかを判断できるようになります。